わんことにゃんこ


彼を犬に例えるなら、そう 1匹の犬だ。
大型犬、色は金色で、たいそう綺麗な毛並みだろう。
目は綺麗なサファイアで、吠えもしない静かな犬だろう。
そうしてあたしをじっと見張っているのだ。
――やんちゃな子猫がどうにかしないように。

「リナ」

叱るだろうか、宥めるだろうか。そんな彼の顔色を伺う妙な癖。
ああ、今日は叱るのか。だけどあたしはどうにも負けていられない性分で。
最終的には「だってそうしたかったんだもん」だなんていい訳にすらならない事を押し付ける。
あたしは子猫なんかじゃないと、そろそろあの犬っころに教えるべきなのに。

「リナ、聞いているのか?あのな――」

はいはい、聞いてます。嫌って程に。
あんたの困った顔とか、見慣れたわ。
ため息とか、聞きなれちゃってるの。
低い声も、女の子の頭に気軽に触ってくれちゃう無骨な手も、慣れすぎて困るぐらいだわ。


「・・・リナ?」

聞こえてるってば。



寝息。
昨晩遅かったせいだろう、と言っても自業自得だが。
盗賊いじめなんぞ、女の子がするものじゃないだろう?
・・・男の部屋に風呂上りでやって来て、ベットの上で寝るというのは―

「襲っちまうぞ、こら。」

そんな出来もしない事を呟いた。


2010.11.10


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