海産物のすけぶ


「・・・随分とご機嫌ね、ガウリイ」
「んー、まあなー♪」

酒に酔ってるワケではないだろう。
ましてや気が狂ってたワケでもない。

「崖崩れに土砂降りだもんなあ~」
「…そーね行けないわね盗賊さんいぢめ」
「だよなあ~」

むかむかと腹の底から沸きあがる苛立ち。何だか負けたよーな気がする。何にか分からな

いけど…。

「そ、仕方ない。リナも今日ばっかりは―」

なんだか「行け」といわれてるような気すらする。悪気は無いんだろう。
じゃあ明日、と言うのも癪だ。アジトを移す可能性もある。キャンプじゃあるまいし川の傍に作

るなんてアホか・・・。


「っ…リナ?」
「……何よ」

視界が歪んでる。
つーかこれは、あたしまた泣いてる…?

「えっとな、その…また今度行こうぜ?オレもついてくから―」


なんであんたはそこまで無駄にあたしに、あたしだけに優しいんだろう。
危ない事をしないってだけで、そこまで喜べて。
泣いたからって、いい大人がこんなガキのご機嫌取りして。

ルークとミリーナが消えてやっと分かった、あんたが恐れてたもの。
そんな事「絶対にない」とは限らないと。

だけど。

あたしは、あんたが望むような形をどうしても生きれない。
それでも、あんたが背負ってくれたあたしの半分みたいに。
ガウリイの半分を背負いたいと思っているのに。
いつも困らせてばっかりで――

「悪かった…」

ごめん。
そんな事言わせようなんて思ってなかったのよ。
分かってた。あんたがあたしをどう思ってるか。
ルークがとっくの前にチクり済みなのよ。相談する相手は選ぶ事ね。


さあ、やるのよリナ・インバース。
この腑抜けた大馬鹿クラゲ野郎の襟首を引っ掴んで、
あのうるさい唇を封じてやるのよ。


あたしの唇で。

なんとなく。
2010.09.20


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