Fate×スレイヤーズ





「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。
 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」


 ――声が、聞こえる。


「誓いを此処に。
 我は常世総ての善と成る者、
 我は常世総ての悪を敷く者」


 ――懐かしい、声が。



「―――我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう・・・!」



 ――あたしを、呼んでいる。







 目を覆うほどの激しい風が、突如狭い地下室の中で巻き起こ
る。
 ガウリイは、思わず両手をクロスさせて顔を覆うと、その衝
撃に耐えた。
 暴れる風は、容赦なく地下室のものを吹き飛ばす。
 まるで永遠に続くのではないかと感じさせた時間は、しかし
実際は、ほんの数秒適度のことだったのだろう。
 始まった時と同じように、唐突に風が収まった。

「・・・・・・っ」

 詰めいた息を吐き出し、ガウリイは手をどかす。
 そして、訝しげに眉を潜めた。
 地下室の中がぐちゃぐちゃになって、儀式に使うための大切
な道具が壊れているのが目に入ったが、今はそんなこと問題で
はない。

「英霊が、いない・・・?」

 英霊を呼び出すための儀式を行ったはずなのに、描かれた魔
方陣にはなにもいなかった。
 香典を入れておくための容器の蓋が、ひっくり返って転がっ
ているだけである。

「失敗したのか・・・?」

 ガウリイがぼやいた、その直後、

 ガシャアァァァァン!!!!

 階上で、大きな物音が響く。
 弾かれたように、ガウリイは顔を上げた。

「上か!!」

 無残にも横たわる道具類を蹴飛ばしながら、ガウリイは地下
室の出口へと急いだ。
 扉を開け放ち、二段飛ばしで地下室から一階へと駆け上がる

 音のした場所――リビングの扉を開けて、

「・・・・・・」

 ガウリイは、思わず唖然と足を止めた。
 リビングの中もひどい状態だった。
 柱時計が倒れて、机もひっくり返り、カーテンなんかびりび
りである。
 しかし、ガウリイが足を止めたのは、そんなことが理由では
なかった。
 その部屋の真ん中に、小柄な少女が立っていたのである。
 腰まで伸びた、銀色の髪。ガウリイに背を向けているためよ
く分からないが、手に持った本にじっと視線を注いでいる。

「おい、お前さん・・・」

 ガウリイの呼び掛けに、ようやく少女は振り返った。
 その顔を見て、ガウリイは「おやっ?」と首を傾げる。
 少女の顔に、どこか見覚えがあったのだ。

「あなたがマスター?」

 訊ねながら、少女はガウリイに近付く。
 手の甲に刻まれた刻印を見つけると、ふっと、小さく微笑ん
だ。

「どうやら、そうみたいね」
「じゃあ、やっぱりお前さんが、オレの英霊か・・・?」
「まったく、今回の聖杯戦争は外れだわ」

 突如首を竦め、少女は大仰なため息とともにそう言った。

「召喚された時にマスターの姿がなかったなんて、始めてよ。
まさか素人同然のやつに呼び出されるなんて、思ってもみなか
ったは」
「素人って・・・オレは一応魔術師だぞ。ばあちゃんにちゃん
とやり方を教えてもらって・・・
「はいはい、分かったわよ」

 ガウリイの台詞を遮って、少女は声を上げる。

「まっ、呼び出されたからには、ちゃんと勝ち上がってみせる
わよ。それがどんなマスターでもね」
「お前さん、口悪いな・・・」

 ぼやくガウリイに、少女は小さく笑ってみせただけで、なに
も言わなかった。

「これからよろしく、マスター」

 伸ばされた手を、ガウリイは慌てて握る。
 それは、英霊とは思えないほど、小さくて華奢な手だった。






 懐かしい顔。懐かしい声。懐かしい――――あの人・・・。
 泣きそうになるのを、あたしは必死で堪えた。
 お陰で、変な顔になったと思う。
 神様、ありがとう。もう一度ここに呼んでくれて。

 もう一度、ガウリイに会わせてくれて――・・・。

 今度こそ絶対に、聖杯を勝ち取ってみせる。
 あの悲劇を、繰り返さないために。
 握った手は温かくて、あたしは少しだけ・・・本当に少しだけ、ぎゅっと力を込めて、握り締めた。




Fateが好きで雑談してたら、ゆみこさんが形にしてくれたもの。
上の絵はなんとなくつけたした。
実際の製作日は実は4/6、出会って僅か1週間でした

どうだこの生殺し・・・!!!
わすれない この くつじょく!!!!
この続きにはこうある

「中途半端wwwざまあwww
ちなみに、続きは考えてないよ^^」

ど ち く しょ う ! ! !
2010.07.26


RETURN