Peter Pan midland


見た目は12か13歳といったところだろうか
ハニーブロンドをなびかせて、あたしの名を呼びながら
絵画から飛び出したような天使が駆け足で走ってくる
満面の笑みのソレは、ついこないだまでは立派な大人なハズだった

あたしの元保護者殿は―いや、まだ保護者だってはりきってるけど――
ともかくっ、相変わらずのあの姿。一向に戻る気配を見せないのだ
朝起きたらああなってた、って言うんだから手に追えない
魔法医からは「精神的なものが作用してるかもしれません」だなんて
結局は「治せないけど、分からない訳じゃないんですえっへん!」って言われてだ
動くに動けず街に抑留してかれこれ1ヶ月
可愛らしい保護者殿はすっかり街のアイドルとなってしまっていた

「リナっ!これ、と・・・これ、食うか?」
「ん、頂くわ」

歩いてるだけでこれだけ食べ物がもらえるとは、将来末恐ろしい子である
って、もう大きくなってたんだわ
立派な男の男性だったのにねぇ…こんなになっちゃって…

大人のガウリイはどうだったかな、なんて考えようとして
あまり彼を知らない事に気がついてしまった――
今が楽しいといえば、楽しいのかもしれない
が、不便だ
魔族が襲ってきた際に抵抗が出来なかったら―、
いやこの現象も魔族の仕業の可能性もある

「リナ、リナ」
「んー?」
「ぼーっとしてるけど、退屈か?こーゆーの」
「あたしはどっかのバカの治療法探すのに忙しくて寝る時間も惜しいぐらいよ」

彼がしゅんと縮む
―別に嫌がってるワケでもないのに
おっきいあんたは、そんな風にしなかったわ
なあんだ、なんて言って何でもない顔しとけばいいのに
いつもみたいに

「ごめん」
「早く治ってもらわないとね」

どっちにしろガウリイはガウリイなのだ、
でもねガウリイ、普通の子供ってのはね――そんな顔しないのよ
悲しいような嬉しいような、そんな笑い方は特にね

「リナ、オレのこと嫌いになったか・・・?」

結局、あたしがどれだけ卑怯だったかを思い知る
だけどあんたはもっとズルい

「何よ、好きとでも言って欲しいの・・・?」

「――おう」

ほら、ズルいヤツ
答えられるはず、ないじゃないの
子供じゃないと、聞けないなんて

「大人になったら答えてあげるわ」

だけどあたしはもっと卑怯だった


彼が「なあんだあ」と呟くのが聞えて、どうにも可笑しかった



2010.06.4


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