紐。


 あたしは難しい顔で、ベッドの上にあぐらを掻いていた。
 目の前にあるのは、アメリアがプレゼントよ、とか言って持ってきた・・・いわゆる、紐パンである。

「これで、ガウリイさんを悩殺するのよ!!」
「できるかあああ!!」

 と、叫んで追い返したものの、その時、これを返すのを忘れていたのだ。
 手に取ってみると、それはやけに小さくて、びっくりする。
 こんなのつけるの? 下着の役目、まったく果たしてないじゃない。
 しばらくマジマジとそれを眺め、きょろきょろと辺りを見渡すと
――と言っても、部屋にはあたしだけしかいないんだけど――部屋のカーテンをシャッと閉める。
 べ、べつに、ガウリイを悩殺するとか、そんなつもりじゃないんだから!!
 ただ、捨てるのも勿体ないし・・・。
 ズボンと下着を脱いで、あたしは意を決して紐パンに足を通した。
 と、その時、

「リナ、ちょっといいか?」

 ノックの音と、ガウリイの声。
 あたしがなにかを言うよりも早く、ドアノブががちゃっと回る。
 あれ・・・? そう言えばあたし・・・鍵かけてない・・・?

「さっきアメリアが・・・」

 言いながら、部屋に入ってきたガウリイは、そのまま硬直した。
 あたしも硬直する。
 無理もない。紐パンなんて穿こうとしている場面に、遭遇したんだから・・・。

「お前さん・・・」
「ち、ちがうわよ!! これは、アメリアが・・・!!」

 あたしは今、太腿の真ん中あたりまで下着を引き上げていると言う、実に中途半端な格好になっていた。
 どうしよう、これ・・・穿くべき?
 いやいや、こんなの穿いても、恥ずかしいだけだし・・・。
 ぐるぐると、頭の中を色んな考えが浮かんでは消えて、まったく纏まらない。
 と、ガウリイが、小さく苦笑した。

「そう言うのは嫌いじゃないんだが・・・風邪引くぞ?」

 ・・・・・・へっ? それだけ・・・?
 むっと、あたしはガウリイを睨みつけた。
 ひ、人がこんな格好でいるのに、その態度はなんなのよ!?
 あたしには、欲情するだけの色気はないってか!?

「あっそ。分かったわよ。脱げばいいんでしょ、こんなの!!」

 怒り任せに、太腿で止まっていた紐パンをずるりと引き下ろす。
 ガウリイがぎょっと目を剥いた。

「おい、リナ・・・」
「なによ!! あんたが言ったんでしょ!! どうせ似合いませんよーだ!!!」

 はあっと、ため息をついたガウリイの手が、あたしの肩にかかった。

「へっ?」

 気が付くと、ぽすんと背中に柔らかな感触。
 目の前にはガウリイの顔と、さらさらと流れる金色の髪。

「お前さん、もう少しムードとか考えたらどうなんだ?」
「ほえ・・・?」

 待って待って。なにこの状況。
 頭の中で、アメリアの台詞がぐるぐる回る。


『ガウリイさんを悩殺するのよ!!』


「ちょっ、ちょちょ・・・ちょっと待って、ガウリイ・・・!!」
「もう十分待った」

 あたしの言うことなんて聞く気がないと言わんばかりに、迫って来るガウリイ。

「もうちょっとだけ・・・」
「待たない」
「あ、あんた、そんなんでいい訳!? た、大切にしてきた女の子、ぺろって食べちゃう嫌な奴って思われても・・・」
「そうは思ってないだろ?」

 ガウリイに突っ込まれ、あたしは思わず言葉に詰まる。

「わ、わかんないじゃない。ちょっとは、思うかも・・・」
「それは、ないな」

 にやりと笑ったガウリイの顔は、やけに男臭くて、不覚にもあたしはドキリとする。

「絶対に、ない」

 それ以上は聞いてやらないと言わんばかりに。
 ガウリイの唇が、あたしの唇をそっと塞いだ。


チャット産。

優灯さんゆみこさんと僕がぼちぼち会話
セリフをぼそぼそ呟いたら
やけに黙ってたゆみこさんがこんな文章に仕立てやがったので
ちょ~どリクエストのあったリナガウガイド絵にくっつけてみたところ
相当いやらしくなりましたとさ、というお話
2010.06.2


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