紡ぎ糸


―そのままのゼルガディスさんもかっこいいと思います―

元に戻ったらもっとかっこいいとは思わんのか・・・?と聞きたかったが、止めにした
聞いても仕方が無い事だ、慰めの言葉に聞えてしまうだろう

昔は思いつかなかったが、レゾに対してこういう見方も出来るようになった
自分と同じ仲間が欲しかったのではないか、と

毎日を遺跡探索と情報収集で過ごし、眠る時間を惜しむ日も少なくはない
焦りはない、ただ「終わらない」だけの話
まるで一昔前のレゾのようだ

俺の寿命はどれほどあるのだろうか
この身体になって数年経ったが、毛髪や爪の伸びはあるものの…人間として成長した形跡が無い。
年を取っていないのではないだろうか
ひょっとして――お前達が死んだ後も一人こうして彷徨うのではないか?
永遠にこのまま…元に戻る方法を探すのだとしたら?
狂わない確証がどこにある?
趣味じゃないと今は言える。だが…
例えば―人の犠牲が人体実験が必要だとしたら
生き血が必要だとしたら、心臓が必要だとしたら?

――いつの日か俺は実行するかもしれない

「…はっ」

そんな事をつらつらと考えながら安宿の天井を睨んでいた、
不意に、あの姫さんの言葉がすとんと降りてきた
そういう意味か?ひょっとして
外見など見ていなかったのか、卑屈に取った俺が馬鹿だったのか?

―そのままの―

「俺も都合のいい奴になったものだな」

暗闇に飲み込まれる一瞬、彼女の声がまた俺を繋ぎとめた


2010.05.30


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