受け継がれるもの


すやすやと眠るちび
小さな手、小さな足。だけどしっかり人間で、生きていて。甘いリナの匂いがする。
綿菓子で出来ていて、抱く時はまだ少し緊張する
壊したらどうしよう、と

「こいつ、い~夢見てそうね。買い物大変だったんだから、さっさと帰りましょ」
「そりゃあれだけ値段交渉すりゃあなあ」

ギリっと小さな足を踏まれて、オレは痛がるふりをして
リナはふんっとそっぽを向く

「一言余計よ、おとーさん」
「すみません、おかーさん…」

大きな紙袋を両手で抱えながらのリナに、前が見えているのかと不安になる。
何せ二人目が出来たのだ 転んだりしたらどうしようかと、ハラハラする
まだお腹は目立たないが、またぽんっと大きくなるのだろう

前に、不思議だと眺めていたら、「音聞いてみる?」とリナが言うので、
恐る恐るそれに耳を当ててみた事がある
うまれるよ、うまれるよ。と どんどんと内側で暴れる音、
リナがそれに耐え、うるうると目を潤ませていて、それがどうにも可愛くて、
オレはその生命力の強さと、愛おしさに泣いてしまった。
何もかもがくすぐったい
リナがくれたこの幸せ、リナがたまにくれるキスに、抱擁に。


「あ、荷物持つぞ?」
「あ、後でいいわ アンタはその子持っててよ」

「重いでしょ?子供の一生って」

いたずらをし終えたような、リナの微笑みに
また、泣きたい気持ちになった。


ちびがあぐっとオレの手を噛んだ
生えかけのちっちゃな歯が当たって、ちょっと痛かった


2010.05.16


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