ちょこぱふぇに捧ぐ



らしくないと思う。
とっても自分らしくないと思う。

あたしは今、とっても緊張している。

「アンタねぇっ…これが緊張しないでいられますかっ」
「そうかー?落ちつけるいいとこなんだけどなあ…エルメキア」

あ、砂漠だらけだけどなっとつけたしてガウリイが笑う。

「そうじゃないっ!!
 アンタの親に会うのが緊張すんのよっ!!」

そう、いまあたしが居るのはガウリイの故郷、
エルメキア。
目的は、彼の両親に会うため。
…一応、報告するんだって…

正直なところ…
逃げたい。
今すぐ逃げたい。

だって、ひょっとしたら
「こんな子供」って言われるかもしれないじゃない?
あたしがどんなに頑張ったって
いまのこの外見を変えることなんてできないんだもん。
そんなにおしとやかでもないし…

考え始めるとどんどん悪い方に行ってしまう。
ほんとに、あたしらしくない。

「ねえ、今度にしない…?」

思わず口から言葉がこぼれおちる。

もっと、もっと
あたしの外見が大人になって、
ガウリイの横に立っても見劣りしないぐらいになったら。

そしたら…

「何だ…?俺の親に会うのがいや、なのか?」

ガウリイの瞳が曇る。

「ちがっ・・・」
「じゃあ、なんでそんなこと言うんだ?」

ガウリイが、
珍しく真剣なまなざしを向ける。
怖くて、思わず目をそらした。

「だって・・・」
「だって?」
「あたしみたいな子供を、認めてくれないかもしれないじゃない…」

言葉がだんだん消えていくのがわかる。

「なんだ、そんなことか」
「そっそんなことってなによっ」

あたしにとっては、すっごい大事なことでっ
ガウリイの両親だからこそ、認めてもらいたいのに…

「大丈夫、リナは心配するな」

にこっと、ガウリイが笑う。
あたしの大好きな、太陽みたいな笑顔で。

胸に広がっていたもやもやがスーッと晴れていく。

「心配、するわよっ!!」
「大丈夫だって!!俺を信じろ!な?」

ガウリイが言うから、
信じないわけにはいかない。
自分自身より、彼の言葉の方がよっぽど信じられる。

「それに、リナ」
「…なによ?」
「お前さん、一人では逃げられないからな?」

口の端を持ち上げて、ガウリイが笑う。

「なんでよ、逃げようと思えばいつだって…」
「お前さんの荷物、俺が持ってる事忘れてるだろ?」

!?
そういえばっ…

「この中の魔道具とか、高いんだろー?これおいてくのか?」

にやにや顔がむかつくっ…!!

「返しなさいよっ!!」
「いやだね、これは人質だっ」

荷物を取り返そうとしても、ガウリイはひらりと身をかわす。
また追いかける。

「逃げないって約束しても返さないぞ?」

「なんっでよ・・・っ」

体力の差がすぐに出てしまう。
息が切れるけど、ガウリイを追いかけるのをやめない。

「俺がこれ持ってたら、お前さんはずっと俺を追いかけてくれるんだろう?」

顔が赤くなるのがわかる。

「俺と一緒にいてくれるんだろ?」

ガウリイが笑う。

「そんなの…」

「そんなのなくても、アンタの隣にいるのはあたしだって決まってんのよっ!!」

ああ、本当にあたしらしくない。

でも…

「ありがとう、リナ」

ガウリイのこんな顔は、みたことがない。

いままでで最上級の笑顔。


外見なんて、すぐに釣り合うようになるんだから。

待ってなさいよ!!

心の中で叫んで、あたしはガウリイを追いかけた。



文章:kaiさん
イラスト:すから
元体験談:ちょこぱふぇ

スレイヤーズオフ会で、一人チームが別になってしまったちょこぱふぇが
なずなさんに後押しされ、二人に会いに行き
栗鼠さんに荷物を取られてしまい、ゆみこさんと栗鼠さんに挟まれ捕虜になったという話より
感動した二人が暴走したもの

良き友を持った事を誇りに思います


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